消化器外科
当科の特色・概要
消化器外科では、胃がんや大腸がん、膵がんなどの消化器がんの手術治療を主に行っています。また、胆石やヘルニアなどの一般的な良性疾患の手術や、緊急性を要する急性疾患(消化管穿孔、腸閉塞、虫垂炎など)、さらには交通事故などによる胸腹部外傷まで幅広く対応しています。
がん手術では、傷が小さく低侵襲な腹腔鏡下手術が主流となっています。2021年度からは最新機器によるロボット支援下手術(ダビンチXi)も導入し、さらに精密な手術が可能になってきました。
がん診療は多様化、複雑化してきています。当院では外科、消化器内科、放射線科、病理科が合同カンファレンスを毎週行い、それぞれの患者さんに最適の治療を話し合って、治療方針を決定しています。また、地域のかかりつけの診療所や病院とも連携して、切れ目のない医療を提供しています。救命救急センターも併設しているので夜間や休日、急変時も24時間対応可能です。
対象となるおもな疾患
- ■ 食道がん
- ■ 胃がん
- ■ 大腸がん
- ■ 膵がん
- ■ 胆道がん
- ■ 肝がん
- ■ 胆石症・胆嚢炎
- ■ 腸閉塞症
- ■ 消化管穿孔(胃十二指腸潰瘍穿孔、大腸穿孔など)
- ■ 急性虫垂炎
- ■ 鼠経ヘルニアや腹壁ヘルニア
- ■ 内痔核など肛門疾患
低侵襲手術支援ロボット da Vinci Xi
- ダビンチ サージカルシステム導入
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京都岡本記念病院では、2021年に低侵襲手術支援ロボット、ダビンチ(da Vinci Xi)を導入しました。
ダビンチは従来の腹腔鏡手術と同じようにいくつかの小さな切開部を作り、医師の操作に従って内視鏡・メス・鉗子を動かして手術を行う内視鏡手術支援ロボットです。ダビンチは、低侵襲技術を用いて複雑な手術を可能とするために開発されました。高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像の下、人間の手の動きを正確に再現する装置です。 - 大腸がん・胃がんの手術 ~機能温存・早期回復に期待~
- ロボット支援手術は、創部が小さい利点は従来の腹腔鏡手術と同様ですが、3Dカメラで高精細な術野を得られ、人間の手を拡張した極めて繊細な操作が可能な点で優れています。大腸がんでは、直腸に密接する骨盤神経叢(排尿や性機能を担っている神経)を丁寧に温存することで、術後の排尿・性機能の保持や早期の回復が期待できます。従来の腹腔鏡よりも骨盤深部での手術操作が可能になり、肛門に近いがんも肛門を温存できる可能性が高まります。
また、胃がんに対しては、従来の腹腔鏡手術で危惧された膵臓損傷が軽減され、手術後の合併症減少、根治性向上が期待できます。
当院では積極的に大腸がん・胃がんに対してダビンチを使用したロボット支援手術を行っています。ご自身の疾患が対象となるかは、かかりつけ医を通じてご相談ください。
おもな病気の診療指針
- 胃がん
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病変の範囲を詳細に検討し、安易に胃全摘を選択せず、可能なかぎり胃を温存する術式を選択しています。進行がんの場合、術前化学療法なども併用して根治性を高めるようにしています。
手術は可能なかぎり腹腔鏡下に行うことで体への負担を少なくし、早期退院、社会復帰につなげられるようにしています。また、栄養科とも連携して食事指導を行っています。 - 大腸がん
- 大腸カメラ、CTやMRI検査で精密にがんの広がりを診断し、適切な切除範囲を決定しています。直腸がんは最もロボット支援下手術(ダビンチ)が得意とする領域で、より深部での操作性が高まりました。直腸がんで肛門に近い病変の場合、根治性や肛門温存をねらって術前化学療法を行うこともしています。腸閉塞の状態で大腸がんが見つかる方もおられますが、その際はなるべく人工肛門造設を避けるためにステント留置などで腸閉塞を解除したのち、後日に鏡視下手術を行うこともしています。
- 膵臓がん
- 膵臓がんは悪性度が高いため、手術だけでなく化学療法や放射線治療を含めた集学的治療が重要になってきます。最近では初めから切除できそうな場合でも、まずは化学療法を施行してから手術を行うことがよいとされています。個々の症例に応じて、内科や放射線科との合同カンファレンスで方針を決めています。
- 胆石症・急性胆嚢炎
- 胆石発作や発熱をともなう胆嚢炎を来した場合、手術をお勧めしています。全身状態がきわめて悪い場合は、局所麻酔下の胆嚢穿刺ドレナージ術などで一時的避難処置を行うこともあります。炎症が軽度であれば腹腔鏡下に胆嚢摘出術を行いますが、癒着が強い場合は開腹胆嚢摘出術になることがあります。
- 鼠経ヘルニア
- 腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術が主流になっています。臍と両側腹部に5mm程度の小さな傷で手術が可能です。4日程度の入院です。腹部の手術歴がある方は、癒着の影響で従来の直視下修復術を選択することがあります。
- 急性虫垂炎
- 最近では、急性期に行わずに抗生剤で炎症や膿をおさえてから、3カ月ぐらい後で待機的に腹腔鏡下虫垂炎切除を行うことも多くなってきました。これは、急性期に膿瘍形成を伴った状態で手術をした場合、腸切除を伴うような大きな手術になる可能性があるためです。ただし、初回での入院期間が延長することもあるので、個々の症例に応じて緊急手術などで適切に対応します。
- 外来化学療法
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がんは現在わが国の死亡原因第一位であり、術後の化学療法が必要である患者さんも年々増加しています。
化学療法の副作用対策や適切な薬剤の使用方法により、その効果は向上し、安全性や患者さんのQOL(生活の質)の点などからも、化学療法は確実に外来での施行が主流になってきています。外来で化学療法を行うことで、患者さんの経済面の負担を少なくし、ご家族の支えの中、安心して治療を受けることが可能です。
当院でも患者さんの要望に応え、これまで入院して治療しなければならなかった「がん化学療法」の一部が、病院に通いながら外来で受けられるようになりました。
外来化学療法室は完全予約制となっており、利用にあたっては前もって主治医に相談して治療を行います。当日の検査データや体調により化学療法の実施や延期が決定されます。
治療は入院で行っていた治療と変わりはなく、疾患ごとの標準的治療法に従って抗がん剤を投与します。投与後の副作用のチェック等は随時行っており、入院での化学療法を外来で同様に行うことが可能です。 - 緩和医療
- 「外来化学療法」「緩和医療」については
がん診療支援のページもご覧ください。
外来診察日
外来診察医師担当表をご覧ください。担当医師(常勤)
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- 清水 義博 主任部長(副院長、救急科部長)
- 資格など
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- ・医学博士
- ・日本外科学会認定医/専門医/指導医
- ・日本消化器外科学会認定医/専門医/指導医/消化器がん外科治療認定医
- ・日本救急医学会救急科専門医
- ・日本Acute Care Surgery学会認定医/評議員
- ・近畿外科学会評議員
- ・日本がん治療認定医機構がん治療認定医/暫定教育医
- ・日本緩和医療学会研修指導医
- ・検診マンモグラフィ読影認定医師
- ・ATOM・SSTTインストラクター
- ・JATECインストラクター/トレーナー
- ・MCLSインストラクター兼近畿支部管理世話人
- ・JPTECインストラクター兼近畿支部世話人
- ・AHA(アメリカ心臓協会)ACLS、ACLSEPインストラクター/京都宇治TSサイト長
- ・日本救急医学会認定ICLSインストラクター/コースディレクター
- ・京都府医師会救急委員会委員
- ・山城北地域メディカルコントロール協議会委員(医師)
- ・京都府臓器移植コーディネーター/代表世話人
- ・日本DMAT隊員/統括DMAT登録者/インストラクター
- ・京都府災害医療コーディネーター
- ・臨床研修指導医
- ・京都大学医学部臨床教授
- ・京都府立医科大学臨床教授
- ・京都府立医科大学卒
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- 福田 賢一郎 部長(院長補佐)
- 資格など
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- ・ 医学博士
- ・ 日本外科学会指導医
- ・ 日本外科学会外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会指導医
- ・ 日本消化器外科学会消化器外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
- ・ 日本内視鏡外科学会技術認定医
- ・ da Vinci Console Surgeon
- ・ 日本消化器病学会消化器病専門医
- ・ 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- ・ 近畿外科学会評議員
- ・ 日本胃癌学会代議員
- ・ 日本DMAT隊員
- ・ 京都府立医科大学卒
- 研究課題・専門分野
- 消化器外科、胃がん
- 医師からひとこと
- わかりやすい説明と迅速な対応で親身になって治療にあたります。
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- 山本 芳樹 副部長(緩和ケア科 副部長)
- 資格など
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- ・ 医学博士
- ・ 日本外科学会外科専門医
- ・ 日本外科学会認定医
- ・ 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- ・ 検診マンモグラフィ読影認定医師
- ・ 日本緩和医療学会研修指導医
- ・ 京都府立医科大学卒
- 研究課題・専門分野
- 一般外科、消化器外科、がん化学療法、緩和医療
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- 工藤 道弘 医長
- 資格など
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- ・ 医学博士
- ・ 日本外科学会外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会指導医
- ・ 日本消化器外科学会消化器外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
- ・ 日本内視鏡外科学会技術認定医
- ・ 日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター
- ・ da Vinci Console Surgeon
- ・ 京都府立医科大学消化器外科特任助教
- ・ 京都府立医科大学卒
- 専門分野
- 消化器外科、大腸外科、腹腔鏡手術
- 医師からひとこと
- 誠意をもって、より低侵襲かつ効果的な治療を患者さん職員一丸となって達成できるよう頑張っていきたいと考えています。
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- 樋上 翔一郎 医長
- 資格など
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- ・ 日本外科学会外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会消化器外科専門医
- ・ 京都府立医科大学卒
- 研究課題・専門分野
- 消化器外科
- 医師からひとこと
- 皆様の期待に沿えるよう力を尽くしてまいりますので、よろしくお願いいたします。
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- 山里 有三 医長
- 資格など
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- ・ 医学博士
- ・ 日本外科学会外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会指導医
- ・ 日本消化器外科学会消化器外科専門医
- ・ 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
- ・ 香川大学卒
- 研究課題・専門分野
- 消化器
- 医師からひとこと
- 患者さんに最善の医療を提供できるよう心掛けるのはもちろん、一人一人にしっかりと向き合い寄り添って治療に励みます。
診療実績
おもな疾患の手術症例数
手術名・病名など | 2021年度(鏡視下) | 2022年度(鏡視下) | 2023年度(鏡視下) |
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胃がん手術 | 37(35) | 39(34) | 55(51) |
大腸がん手術 | 124(103) | 103(91) | 109(94) |
ロボット支援手術 | ━ | 20 | 56 |
膵切除手術 | 13 | 18(1) | 27(4) |
肝切除手術 | 10(4) | 10(1) | 14(6) |
食道がん手術 | 6(6) | 4(4) | 3(3) |
虫垂切除手術 | 40(39) | 31(31) | 32(29) |
胆石症・胆嚢炎 | 123(107) | 118(109) | 133(126) |
鼠経ヘルニア手術 | 99(77) | 92(76) | 115(94) |